ネオニートのつくりかた:phaさんインタビュー
あけましておめでとうございます。
本ブログでは、これまで主にインターネット界隈のトレンドに対する論考を掲載してきました。今年、2012年の新しい試みとして、従来の論考に加え、ときどきインタビューを掲載しようと考えています。私が面白いと思う人に声をかけて、私が聞きたいことを質問し、その内容を載せるという単純な企画です。なぜインタビューなのか、という点については機会があれば説明したいと思います。
インタビュー第一弾は、ネオニートのphaさんにお願いしました。phaさんはニートとしてテレビや雑誌に取り上げられる傍ら、ギークハウスと呼ばれるルームシェア企画を立ち上げたり、ブログや雑誌などに独特の社会観のある文章を書いたりしています。
ちなみに私にとってphaさんは京大時代の先輩で、かつて熊野寮という大学寮で一緒に麻雀をやった仲です(追記:あ、私は寮に入り浸っていただけで、寮生ではありません)。インタビューは昨年末、ギークハウスにお邪魔して行いました。
以下、写真はギークハウスにいた猫です。

−さっき妻に「これからphaさんに会ってくるよ」って言って家を出たんですけど、妻が「phaさんって最近なにしてるの」と言うから、「ネオニート」って答えたら「ネオニートってなんなの」て言ってました。
あー、それは正しいツッコミだよね。
−phaさんはメディアとかイベントによく露出してますから、ちゃんと働いてるじゃないかとか、あれはニートじゃないとか言われてますけど。
まあそうなんだよね。きっちり会社員はやってないけど、収入はあるので。お金はないけど。
−貯金はなくなったって言ってましたね。
それはだいぶまえやね。仕事をやめて最初の二年は貯金もあったんだけど、そのあとは月の収入でやってる感じ。原稿書いたり。
−そういえばSoftwareDesignに連載があってびっくりしました。
あれはなんやろう、ブログを書いてたら、書いて下さいってオファーが来て。それから、今はニートについて本を書くみたいな話もあって。だるいなあ、仕事だなあと思いつつ。
−それは面白そうです。そもそも、以前は普通に仕事してましたよね。
うん。まえは大阪とかで働いてて、そのあとバンコクに行って。
−そうでしたっけ?
そう、大阪の仕事の関係で。大阪にいるよりは面白そうで、わりと希望して行ったんだけど、本当は二年くらいいるつもりで、一年で飽きて辞めたという。
−それはひどい。
それで帰ってきてからぶらぶらしてて、ギークハウスをはじめたのが三年前かな。最初は一つだけだったんだけど、作りたいという人が増えてきたから、まあ勝手に作ってくださいと。
−どうしてギークハウスがはじまったんですか。お金がないというわりに、都心も都心にあって驚きましたが。
ここはたまたま、シェアハウスとして運営している会社があって、紹介してくれる人がいて、貸してもらえることになって、どうせシェアハウスにするならギークハウスにしましょうということになって。まあシェアしてるぶん、一人あたりは安くなってるという。基本的にお金はないんだけど、あまり使わないので。
−はじめてお邪魔したんですけど、完全に熊野寮のムードです。
熊野寮とか吉田寮(編注:どちらも京大の古い学生寮)の呪縛というか、二十歳前後をああいうところで過ごすと、一生ついてまわるというか、こうなってしまうのかなと。僕自身も熊野寮が居心地良かったというのがあって、そういうのをまたやりたいなあと思ってやってるから。熊野寮に入ってなければ、ギークハウスもなかったのかなあ。
−このまえはノマドのイベントに出てましたね。phaさんはノマドなんですか。
ノマドではないんだけど。まあ最近言われてるのは結局、会社に属さずにとか、カフェで仕事するとか、コワーキングスペースとか。実際どういう意味なんでしょうね。
−そうすると寮生活もノマド的という。
あー、そうだよねえ。溜まり場的なものを作りたいという感じはある。普通のコワーキングスペースとか使うとなると、そんなに高くはないんだけど、やっぱり金がないといけないので、ダメな人がダラダラする感じじゃない。東京は家賃が高いから仕方ないんだけど。というか、まあ熊野寮が異常だったんだけど。

−たしか大晦日がお誕生日ですよね。変化ってありますか。
うーん、今年で34だけど、子供を作る願望も予定もないし、二十歳も三十歳も四十歳も、特に変化なくだらだら続いていくんじゃないかなという。
−そもそもいま、願望とか予定とかあります?
ないんだよね。特になくて、どうしようかという。仕事やめてぶらぶらするとか、海外に住んでみたいとか、猫を飼ってみたいとか、前からやりたかったことはやってしまってて、もう特に大きな目標がない。今はしばらくだらだらするかという感じなんだけど。
−不況ですし、phaさんに限らず大きな目標がないという人は多いかもしれません。
昔から出世を目指さない人というのはいたと思うんだけど、増えてるというか、そういう人が主流になってるんじゃないかなという感じがする。
−いわゆる社会人と、そうなりきれない人の二極化でしょうか。
僕は人と会うと疲れるんだけど、でもずっと人と会ってても疲れない人がいるんだとはよく思う。そういう人は会社とかに行っても疲れないんだろうけど、僕は会社にいるだけで疲れる。
−じゃあ仕事が嫌というのは、人と会うのがしんどいという意味なんですか?
人と会うのもしんどいし、これをやらなきゃいけないというタスクがあるのもしんどい。
−でも締切がないとダメって言う人もいますよね。
そういう人は締切がないとダラダラしちゃうって言って、バリバリしてるんだけど、別にダラダラしてもいいじゃんって思う。そういう人は人間の出来かたというか、別の人種なのかなと思ってる。
−そうするとバリバリ型とダラダラ型と、どっちの人種が多いんですかね。
大学からは自分と似た人ばかりと会って偏ってるから参考にならないけど、高校のときとかを考えると、半分くらいは苦痛なく働ける人なんじゃないかなと。
−ダラダラがもう半分もいますかね。みんな仕事に不満はあっても辞めませんし……。
バリバリはもっと多いかな。でもそういう人と会う機会はほとんどなくなってしまった。
−ダラダラでも、ニートでもいいじゃんというのは、今時というか、バブル世代に対する反動なのかなとも思うのですが。
僕はあんまりバブルとかは意識してなくて、たぶん自分はバブルでも不景気でも同じようにやってるだろうという感じがするから、世代に対してどうとかはないんだよなあ。そういう人はまあ、どの時代にも一定はいたのかなと。

−phaさんはネオニートの生き方をブログにいろいろと書いていて面白いんですけど、一方でそれを真似してもみんなうまく行くわけではないのではという思いもあります。
それはあるかもしらん。けっきょく偽ニートじゃんと言われると。ニートとかノマドとか、高学歴ばっかりじゃんと言われることもあって。
−学歴は関係ありますか。
もともと能力のある人しか、そういうことができないというのはある。僕とかは、なんかのヒントになればと思ってブログとかを書いたりするんだけど、でも真似できないって言われたら、それはまあ誰もが真似できるものじゃないのかなと。
−すると、なにがネオニートの能力なんでしょう。私の見立てだと、ダルいと言ってるわりにはよく人と会ってるなあと思うんですけど。
あー、会ってるように見えるだけじゃないかな。ネットにぜんぶ出してるから目立つという。三日に一度くらいしか会ってないと思うんだけど。学校とか会社に行ったりしてる人は毎日誰かと会ってるわけで、でもそんなのわざわざネットには書かない。
−でも知り合いは多いですよね。
まあ、そういう人の集まるところにちょっと顔を出すというか。ギークハウスでパーティをやるとか。僕はアクティブではないし、出かけるのは面倒だから、逆に自分のホーム、ギークハウスに来てもらうようにしてる。
−世代の話に戻りますけど、ギークハウス自体はどういう世代構成なんでしょう。これからみんな歳をとるんでしょうか。
20代で、僕より若い人が多いかな。若い人うちはいいけど、歳とったあとどうなるのかは分からないなあ。
−そんな無責任な!
まあ分かんないよ、まあ。でも大部分の人は普通の生活に戻るんじゃないかな。若いころの一時期に、こういう生活をしてればいいんじゃないという。何年かで卒業するくらいでちょうどいいかな。
−じゃあphaさんはどうしますか。
僕は、うーん、ずっといるかなあ。40くらいでも同じことをしてそうな気がする。先のことは分からないけど、僕が40になるころは、同じような40代がいるだろうし、60になるころは、同じような老人がいるだろうから、そういう人達となにかできれば、生きやすいかな。

phaさん: