テレビが求めるソーシャル処方箋
概要:ソーシャルメディアとの連動に乏しい現在のテレビに対し、これから様々なプレイヤーがネット連携やアプリ対応といった機能を持ち込むだろう。テレビの存在は今も大きいため、ネット化したテレビは番組の内容やソーシャルメディア環境にも影響を及ぼすはずである。

アップルのスティーブ・ジョブズ氏は惜しまれつつCEOを退任したが、一方で多くのCEOが業績不振の責任をとって辞職している。PC周辺機器の大手メーカー、Logitechのジェラルド・クィンドレン氏も、直近の四半期決算で純損失を計上した責任をとって、8月にCEO職を辞任した。同社が業績不振に陥った理由のひとつは、今年投入したばかりのGoogle TV端末「Revue」が不人気なことだ。Revueはテレビと接続するセットトップボックス型の製品で、提携する様々な動画配信サービスを横断して検索し、視聴できるというのがウリである。しかし299ドルという値段ではまったく売れなかったのか、現在は99ドルで投げ売りされている。
今日、ウェブサービスで集客を試みるなら、ソーシャルメディアの力を無視することはできない。TwitterやFacebookを通じてクチコミを集め、そこから人気を高めていくというのが、今日的なプロモーション方法だろう。しかし、テレビはそうしたソーシャルメディアととても相性が悪い。たとえば、あるテレビ番組がTwitterで盛り上がっているのに気付いても、普通は遡って観ることはできない。再放送でもなければ、クチコミは活用されていかないのだ。またテレビ番組は、YouTubeのおもしろ動画のようにソーシャルメディアからワンクリックで視聴することもできない。結果として、人がPCやスマートフォンに時間を費やせば費やすほど、テレビの時間は減っていく。せっかくソーシャルメディアでテレビの話題が多くなされているのに、テレビ業界はそれを活用できていないのである。
それでもテレビはなお家庭において大きな存在である。ネットメディアの普及によりテレビの地位低下が訴えられているが、テレビの世帯普及率はいまもほぼ100%を誇っている。視聴率はゴールデンタイムでさえ10%がせいぜいとなってきているが、これは関東地区の場合400万人が視聴したことを意味しており、一日で数百万PVも稼げば超巨大ウェブサイトと見なされることを考えれば、これは大変な数字である。そして薄型テレビの売れ筋は昨今30インチを超え、40インチ超に達しており、家庭にパソコン、タブレット、携帯電話などが共存する「マルチウィンドウ」時代においても、テレビのサイズは他を圧倒して譲らない。
いまもなお多くの人の時間を捉え、リビングルームを占拠するテレビ。この貴重な端末を、ソーシャルなものに生まれ変えさせたいと考えるのは当然のことだ。特に地デジ化を終え、次なるセールスポイントを模索するテレビメーカーにとって、ソーシャル化は大きな課題だろう。たとえばソニーは米国でGoogle TV内蔵テレビを販売するほか、国内においても「ブラビア」に番組と連動してTwitterやニコニコ動画のコメントを表示する「アプリキャスト」と呼ばれるアプリフレームワークを用意している。同種のテレビ用アプリフレームワークは他社も導入を進めており、パナソニックの場合は「VIERA CONNECT」となる。ほかにもフィリップス、LG、シャープがテレビ用アプリの共通規格策定を発表したばかりだ。しかし、大手テレビメーカーによってアプリ規格が異なる状況を、どれほどの開発者が支持するだろうか。
ほかのアプローチもある。たとえばテレビ上のウェブブラウザが快適に動作するようになれば、HTML5で作られたウェブアプリはテレビ上で動作し、PCなどとも連携していくようになるだろう。LinuxベースのプラットフォームMeeGoのように、スマートTV向けの開発環境を整備する動きもある。また、PS3やXbox 360といったテレビと接続するゲーム機は、すでにNetflixやHuluといった動画配信サービスと連携している。次世代ゲーム機はさらにサービス連携を推し進めたものとなるだろう。スマートフォンやタブレットが高性能化すれば、ネット連携はこうしたモバイル端末が請け負い、テレビは映像信号を受け取って出力するだけになるかもしれない。すでにソニーはスマートフォン「Xperia」から映像を同社の「ブラビア」へ無線で出力するサービスを発表している。
数年のうちにテレビは大きなディスプレイを備えたネット端末となるだろう。テレビがネット端末となれば、映像配信サービスはソーシャルメディアの援護を受けて人気を拡大させていくはずだ。開発環境が整えば、今日のiPhone用アプリのようにテレビ用アプリも普及していくに違いない。問題は、それを誰が、どのようにやるかだ。
考えられるアイデア
- テレビとの連携に焦点をあてたソーシャルメディア
- テレビ用アプリの開発環境、特にUnityのようなマルチプラットフォーム対応フレームワーク
- テレビ番組とソーシャルメディアを連携させる企画・コンサルティング
- テレビとネットの連携に最適なインタフェース、リモコン